すいみんモグモグ

思っていることを書き連ねるだけのブログ

先輩の話

基本的に遊ぶ友達が毎回同じになってしまう。仲が良いし連絡も頻繁にとるから定期的に遊ぶのは当たり前と言えば当たり前なんだけど、たまには久しぶりに会いたくなる人だっている。

誕生日とかお正月くらいしか連絡を送らないくせに、そのたび「会いたいですね~」とか「遊ぼうね」なんてお互いに送りあって3年がたつ人がいた。このままじゃ一生会わないかもしれないと気付いた私は思い切って会いに行った。

久しぶりに会ったその人はいかにも「東京に住んでるお姉さん」だった。
控えめで内向的で人前に立つなんて出来ません、人と関わるのすら苦手ですと言わんばかりの見た目で一応先輩だったけどあんまり年上の感じがしなかった。それでもどこか波長が合ったのか後輩の私でも親しく接してくれたのが始まりだった。そんな先輩が大学に行って卒業を間近にする頃、私はこれからどうするのかと尋ねた。照れくさそうに「声優とか演技の勉強をしようかなって思ってるんだ」と告白され、度肝を抜かれたのを今でも覚えている。声優??アニメの???アニメとか声優とか好きだったっけ?????頭の中でハテナがいっぱいになって、そのまま先輩を東京に送り出した。こんな思い切ったことをする人だったっけ。

それからお互いごく稀に連絡は取るのものの、会うことはなかった。先輩は先輩で、私は私で新しくなった環境でそれなりに楽しく生きていたから、特に気にしてはいなかった。時々近況を聞くとお芝居の練習とかしてるよと教えてくれるものの、何かを演じて人前に立つ先輩を一つも想像できなかった。

ようやく自分も社会人になってそれなりのお金を手に入れて東京に行くのも金銭面的に楽になった。好きな物を買ったり仲のいい友達と遊んで帰るときに楽しかったと満足した後、なんとなく先輩のことを思い出したり東京に住む他の友達もいたよなぁと思いだしていた。ずーっと会ってないと遊びの誘い方すら忘れてしまうものなのか。いつも遊ぶ仲の良い子ならそんなこと悩む間もなく、自然と遊ぶ流れになったいたから余計。

誕生日の3日後くらいに、先輩にいつ休みですかと送ったら、ちょうど仕事が休みの日と重なった。そして気付けば東京で先輩と待ち合わせをしている自分がいたのだった。

約束の時間をだいぶ過ぎてから現れた先輩は、長かった髪をボブくらいに切り、真っ黒な髪も茶色に染め、可愛らしいワンピースを着ていた。どことなく雰囲気が伊藤万理華に似ていた。そして何よりいい匂いがいしてそのたびどぎまぎしてしまった。

「ここの来るの久しぶり~あれ、ここ来たことあったっけうーん…大学の時?」「あ!ここはなんとなく見覚えがある…?気がする」と話したり、水族館のチンアナゴの水槽を物珍しそうに眺めて喜んだり、水槽の端っこにいる誰にも気付かれないような小さな魚を見つけたりする先輩に少しホッとした。中身は昔と何ら変わらなかった。

ファミレスに入ってメニューを決めている時、随分と迷っているからどうしたのかと聞くと、困った顔でご飯を大盛りにしようか迷ってるんだ、と。背が小さくて華奢だからすっかり忘れていたけど、よく食べる人だった。笑いながら好きなだけ食べてくださいというと嬉しそうに大盛りライスを注文していた。食べながら近況を報告しあった。共通の友達とかの話をしたりダラーっと時間が過ぎていった。声優は諦めたけど、何かを演じたり、曲を作ったりしたいと教えてくれた。最近まで小さな劇団で演技の勉強をしたり舞台に立っていたそうだ。舞台が終わるとたまらなく寂しくなって、もっと出たい、もっとうまく出来たかもと悔しくなるんだと話す先輩はかっこよかった。こんなこと出来る人だったんだと驚いた。

そのあとあてもなく30分くらいフラフラした時、恋愛は相手のことを許せるかどうかで判断する的な話をどこかで聞いたのを思い出した。このあてもなくフラフラしてる時間、人に寄っては絶対イライラしちゃうかもしれないのに、それさえも楽しいし何されても許せるかもしれないとぼんやり考えていた。本屋に立ち寄って音楽関係の専門書を手に取りながらこれからのこととか好きなことを話す姿は、少しだけ恥ずかしそうだけどやっぱり楽しそうで、キラキラしていた。この人を素直に応援したい。そう思えるのは、かつてその人のことを好きだったからなのか。心地よいを与えてくれる電車の中でぼんやり頭でそんなことを考えていた。